『ズートピア2』には、『シャイニング』『羊たちの沈黙』『レミーのおいしいレストラン』など、映画ファンが反応せずにいられないオマージュやイースターエッグが数多く仕込まれています。
看板や配信画面の小ネタだけでなく、構図、セリフ、音楽、効果音まで元ネタが隠されているため、初見ですべて見つけるのはほぼ不可能です。ニックとジュディを追いたいのに、背景まで気になって目が足りません。制作陣、観客の視力を少し過信しています。
この記事では、『ズートピア2』のオマージュはどこにあるのか、何の作品が元ネタなのかを、具体的な場面とともに整理します。
※この記事は『ズートピア2』の結末を含むネタバレがあります。未鑑賞の方はご注意ください。
ズートピア2のオマージュが多すぎる理由とは?
『ズートピア2』にオマージュが多いのは、単なるファンサービスではありません。
過去の映画が持つイメージを借りることで、場面の緊張感や登場人物の関係を短時間で伝えていることが大きな理由です。
ポイント オマージュが果たす役割
前作より舞台が拡大 新エリア、看板、店舗、小道具など、仕込み場所が増えた
映画の空気を伝える ホラーや恋愛映画の記憶を利用し、感情を瞬時に共有できる
大人と子どもの両方が楽しめる 子どもは物語を、大人は元ネタ探しを楽しめる
再鑑賞につながる 一度目では見逃した背景や音を確認したくなる
世界の生活感を補強する 動物向けの広告や番組を置き、街が実在するように見せる
共同監督のジャレド・ブッシュは、採用されなかった案だけでも約800個あったと説明しています。すべて入れると物語への集中を妨げるため、かなりの数を削ったそうです。つまり、完成版に残った小ネタは、膨大な候補の中から選ばれたものということになります。Good Housekeeping
約800個。
この数字を知ると、背景の看板ひとつにも疑いの目を向けたくなります。純粋に映画を楽しむつもりが、いつの間にか映像鑑識班です。
前作を知っている観客に向けた続編ならではの仕掛け
前作『ズートピア』では、砂漠、熱帯雨林、ツンドラなど、異なる環境をひとつの都市に共存させる世界設計そのものが大きな驚きでした。
一方の『ズートピア2』では、観客がすでに街の基本構造やジュディとニックの関係を知っています。そのため、世界を一から説明するよりも、新しい文化や歴史を背景の情報から発見させる演出が増えました。
看板の文字、店舗の名前、住民が使っている道具。画面の中心では事件が進み、その周囲ではズートピアの暮らしが動いています。
オマージュは、その周辺部分を豊かにするための装置でもあるのです。
子ども向け映画に大人向けの元ネタを入れる狙い
『ズートピア2』には、『ダンボ』や『塔の上のラプンツェル』のように子どもでも気づきやすい引用がある一方、『羊たちの沈黙』や『シャイニング』のような大人向け映画のオマージュも登場します。
子どもは元ネタを知らなくても、追跡劇やコミカルな動きとして楽しめます。
大人は過去に観た映画の記憶が重なり、場面の意味をもう一段深く受け取れる。この二重構造こそ、ディズニー作品らしい巧さでしょう。
オマージュとイースターエッグの違い
似た言葉ですが、厳密には少し意味が異なります。
- オマージュ:過去の作品への敬意を込め、構図や演出、音楽などを意識的に参照する表現
- パロディ:元ネタを笑いや風刺の形に変えて見せる表現
- イースターエッグ:背景、小道具、名前などに隠された秘密の小ネタ
- カメオ出演:有名人や過去作の人物が短時間だけ登場すること
ただし、『ズートピア2』では複数の要素が重なる例もあります。
ライオンのシェフの帽子からネズミが現れる場面は、『レミーのおいしいレストラン』へのオマージュであり、見逃しやすいイースターエッグでもあります。さらに別作品まで重ねられているため、分類しようとすると少し忙しい。作る側も見る側も忙しい映画です。
ズートピア2のイースターエッグはどこにある?
『ズートピア2』のイースターエッグを探すなら、背景の看板、配信サービスの画面、一瞬だけ映る小道具、BGMと効果音に注目してください。
物語の中心に堂々と置かれているものより、見逃しても本筋に影響しない場所へ仕込まれている傾向があります。
注目する場所 確認したいポイント
街の看板・広告 実在作品を動物名に置き換えたタイトル
映画ポスター 有名映画と似たロゴ、構図、衣装
配信サービス風UI ディズニー、ピクサー、スター・ウォーズ作品の動物版タイトル
机や棚の小物 過去作と同じ形をした道具や置物
キャラクターの動作 過去作と同じ攻撃、ポーズ、視線
BGM・効果音 元作品と同じ旋律、楽器、効果音
セリフ 名作映画の印象的な言葉の引用
背景の看板と広告
街の看板や広告は、最もイースターエッグが集まりやすい場所です。
主役が会話している間に画面の端を通り過ぎるため、初見ではほとんど読めません。しかし、一時停止すると、動物の名前を使った企業名や映画タイトルが並んでいます。
序盤の追跡場面では「Gnu Jersey」という地名風の看板が登場します。「Gnu」はヌーを意味し、ニュージャージーを動物名に置き換えた言葉遊びです。前作に登場したブランド「Gnucci」ともつながるネーミングになっています。Good Housekeeping
こうした看板は物語の展開に直接関係しません。
それでも置かれていることで、ズートピアの住民にも流行やブランド、地域文化があるのだと感じられます。ただ笑わせるだけでなく、街の厚みをつくっているのです。
配信サービス「Huluzoo」の作品一覧
ニックが自宅で配信サービスを眺める場面は、イースターエッグの密集地帯です。
画面には「Huluzoo」というサービス名とともに、実在する映画や番組を動物風に変えたタイトルが並んでいます。
確認されている主な名称は次のとおりです。
- Pigsar:Pixar
- Star Roars:Star Wars
- Rat Geo:National Geographic
- ELKS:ESPN
- Ham-ilton:『ハミルトン』
- Platypus:『エイリアン』を思わせるロゴ
- Die Herd:『ダイ・ハード』
- Ramdor:『キャシアン・アンドー』
- Futurllama:『フューチュラマ』
- Piggity Falls:『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』
- The Pandalorian and Growlgu:『マンダロリアン』関連作を動物化した題名
配信画面は短時間しか映らないため、一度で全部読むのは困難です。Good Housekeeping
しかも、ニックが事件から少し離れてくつろぐ日常場面に置かれています。
警察官になっても、家では配信作品を選びながら時間を溶かす。そんな妙に現代的な生活感まで伝わり、ニックが急に身近な存在に見えてきます。
小道具は「形」と「使い方」を見る
小道具型のイースターエッグは、見た目だけでなく使い方に注目すると見つけやすくなります。
特に分かりやすいのが、ニックがゲイリーをフライパンで殴る場面です。
フライパンそのものは珍しい道具ではありません。しかし、ディズニー映画でフライパンを武器として使う人物といえば、『塔の上のラプンツェル』のラプンツェルが思い浮かびます。
しかも、この場面では『塔の上のラプンツェル』と同じフライパン、同じ効果音が使われたことを制作陣が明かしています。シネマトゥデイ+1
見た目だけでなく、音まで同じ。
気づかなくても笑える場面ですが、元ネタを知ると、ニックが一瞬だけディズニープリンセスの戦闘技術を受け継いだように見えてきます。本人はたぶん納得しないでしょう。
音楽と効果音は耳で探す
画面の情報量が多い『ズートピア2』では、目だけでイースターエッグを探そうとすると疲れます。
そこで意識したいのが音です。
特定の作品を連想させる旋律、過去作と同じ効果音、場面に似つかわしくないほど印象的な楽器などが聞こえたら、元ネタが隠されている可能性があります。
字幕を読みながら背景を追い、さらに音まで聞き分ける。鑑賞というより少し訓練に近づきますが、二度目以降は音へ意識を向けるだけでも新しい発見があります。
有名映画のオマージュはどこ?元ネタを場面別に解説
『ズートピア2』で特に印象的なのは、ディズニー作品だけでなく、ホラー、サスペンス、ファミリー映画など幅広い映画から演出を引用している点です。
なかでも分かりやすい元ネタは、次の作品です。
『ズートピア2』の場面 元ネタ
雪に覆われた迷路での追跡 『シャイニング』
ベルウェザーの独房 『羊たちの沈黙』
ライオンのシェフを操るネズミ 『レミーのおいしいレストラン』
アライグマの料理人 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
ホグボトムにかけられる言葉 『ベイブ』
マーシュ・マーケットの舟上で流れる歌 『わんわん物語』
『シャイニング』|雪の迷路とパウバートの追跡
終盤、ニック、ジュディ、パウバート・リンクスリーが雪の積もった樹木の迷路で追跡を繰り広げます。
この場面の元ネタは、スタンリー・キューブリック監督の映画『シャイニング』です。
『シャイニング』の終盤でも、雪に覆われた巨大な迷路が舞台となり、逃げる者と追う者の緊張した攻防が描かれます。
『ズートピア2』では、足を引きずりながら追うパウバートの姿や、雪の中で方向感覚を失わせる構図まで、元作品を強く意識した演出になっています。さらに作曲家マイケル・ジアッキノは、『シャイニング』を連想させる音楽を意図的に取り入れました。シネマトゥデイ+1
このオマージュが効果的なのは、単に有名な迷路を再現しているからではありません。
それまで親しみやすさを見せていたパウバートが、ジュディたちを追い詰める存在へ変わったことを、観客へ瞬時に理解させています。
画面に雪が広がるほど、人物の孤立と恐怖が強くなる。子ども向けアニメの色彩を保ちながら、場面の骨格は本格的なホラー映画です。
『羊たちの沈黙』|ベルウェザーの独房
前作で事件を起こした元副市長ベルウェザーは、『ズートピア2』で刑務所に収監されています。
ジュディたちが訪れる独房は、『羊たちの沈黙』に登場するハンニバル・レクター博士の独房を再現したような造りです。
警備員が歩く場所を指示するセリフも、クラリスが初めてレクター博士のもとへ向かう場面を踏まえています。制作途中では、二人が出会う場面を約4分にわたり、元作品の流れに沿って再現する案もあったといいます。最終的には子どもの集中を失う可能性を考え、短く調整されました。シネマトゥデイ+1
そして、収監されているのはヒツジのベルウェザー。
『羊たちの沈黙』をヒツジ本人で再現するという、かなり直球の言葉遊びです。真面目に不穏な場面なのに、元ネタを理解した瞬間だけ笑いが入り込む。この温度差が実にズートピアらしいところでしょう。
ベルウェザーを再登場させるだけなら、普通の独房でも成立します。
それをレクター博士風に見せることで、前作では小柄で穏やかに見えた彼女が、いまなお危険な知性を持つ人物であると印象づけています。
『レミーのおいしいレストラン』|シェフを操るネズミ
ズーテニアル・ガラの厨房で、ライオンのシェフの帽子が吹き飛ぶと、その下から小さなネズミが現れます。
ネズミがシェフの毛を引っ張り、料理の動きを操っている姿は、ピクサー映画『レミーのおいしいレストラン』への明確なオマージュです。
さらに、この場面では同作の音楽を思わせるアコーディオンが流れます。『ズートピア2』と『レミーのおいしいレストラン』の両方で音楽を担当したマイケル・ジアッキノが、自らアコーディオンを演奏しました。
アニメーションを担当したのも、『レミーのおいしいレストラン』に参加したアニメーターです。映像、音楽、スタッフまでつながった、かなり手の込んだ引用になっています。シネマトゥデイ+1
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も重なる
同じ厨房には、ネズミの存在を見て「やっぱり」と反応するアライグマの料理人がいます。
これは『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に登場した、『レミーのおいしいレストラン』のパロディ「ラクーン料理人」を踏まえた二重の小ネタと考えられます。
さらに、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』に出演したキー・ホイ・クァンは、『ズートピア2』でゲイリーの英語版声優を務めています。シネマトゥデイ+1
一つの帽子の下に、ピクサー作品、別の実写映画、出演者の縁まで詰め込まれている。
ここまで来るとイースターエッグというより、制作陣による小さな映画祭です。
『ベイブ』|「よくやった、豚よ」
イノシシの警部ホグボトムと相棒トリュフラーの場面では、動物映画『ベイブ』の名セリフが引用されています。
トリュフラーがホグボトムへかける「That’ll do, pig. That’ll do」という言葉は、『ベイブ』で農夫ホゲットが子ブタのベイブへ静かに伝えるセリフです。シネマトゥデイ+1
元作品では、努力を認める短く温かな言葉でした。
『ズートピア2』ではイノシシ本人に向けて使うことで笑いに変えながら、相棒への信頼も伝えています。
有名なセリフをそのまま飾りとして置くのではなく、キャラクターの種族と関係性に合わせて機能させている点が印象的です。
ディズニー作品へのオマージュ一覧
『ズートピア2』では、ディズニーとピクサーの過去作品も幅広く参照されています。
比較的見つけやすいのは、『ダンボ』『塔の上のラプンツェル』『アナと雪の女王』『ライオン・キング』『わんわん物語』『ミラベルと魔法だらけの家』です。
『ダンボ』|ネズミに驚くゾウのフランシーヌ
ジュディとニックは、任務で問題を起こしたことから、警察署内でパートナー向けのカウンセリングを受けます。
そのグループにいるゾウのフランシーヌは、ネズミの相棒を見て大きく驚きます。
これは『ダンボ』で、ゾウたちがネズミのティモシーを恐れる場面を思わせる演出です。映画.com+1
現実のゾウが必ずしもネズミを恐れるわけではありませんが、映画やアニメでは長く使われてきた組み合わせです。
ズートピアでは動物にまつわる既存のイメージそのものが、偏見や先入観を描く材料になります。
そのため、この短い笑いにも「種族に対して勝手な性格を当てはめる」というシリーズのテーマが、うっすらと重なって見えます。
『塔の上のラプンツェル』|ニックのフライパン
ゲイリーを危険な存在だと誤解したニックは、フライパンでその頭を殴ります。
元ネタは、『塔の上のラプンツェル』でラプンツェルがフリン・ライダーを撃退する場面です。
制作陣によれば、同じフライパンと同じ効果音が使われています。シネマトゥデイ+1
ラプンツェルもニックも、目の前に現れた相手を危険だと判断し、とっさに攻撃します。
しかし、殴られた相手は後に大切な仲間となる。道具だけでなく、誤解から始まる関係まで似ている点が面白いところです。
『わんわん物語』|マーシュ・マーケットの「ベラ・ノッテ」
ジュディとニックがマーシュ・マーケットを移動し、セイウチのボートに乗る場面では、『わんわん物語』の楽曲「ベラ・ノッテ」が流れます。
『わんわん物語』では、育った環境の違うレディとトランプの距離を近づけるロマンチックな歌として使われました。
共同監督のバイロン・ハワードは、この曲が恋愛やパートナーシップを象徴する楽曲であることに触れています。シネマトゥデイ+1
ジュディとニックも、ウサギとキツネという本来なら警戒し合う関係から、互いを信頼する相棒になりました。
二人が恋愛関係になるのかは別としても、異なる世界に生きてきた者同士が並ぶ場面に「ベラ・ノッテ」を重ねる意味は明確です。
しかも、本人たちは捜査の途中です。
音楽だけが勝手にロマンチックな空気をつくり、二人はそれどころではない。この少し気まずい温度まで含めて、実に楽しい引用になっています。
『アナと雪の女王』|ノック音と裏切りの構図
ジュディとニックが、マーシュ・マーケットの地下にある爬虫類たちの集会場所へ入る場面では、隠し扉を叩くノック音が使われます。
そのリズムは、『アナと雪の女王』でアナがエルサの部屋を訪れ、「雪だるまつくろう」と誘う場面を思わせます。キャステル | CASTEL テーマパーク情報
また、終盤でパウバートがジュディを裏切る展開には、ハンス王子がアナを裏切る場面との共通点が指摘されています。
どちらも、家族の中で十分に認められなかった人物です。
ただし、ノック音以外の類似については、制作陣が明言したものではなく、場面の構図や人物設定から読み取られた考察として受け止めるのが適切でしょう。
『ライオン・キング』|昆虫を食べる場面
爬虫類の重鎮ヘイスースは、ジュディたちを試すように昆虫を差し出します。
この場面は、『ライオン・キング』でティモンとプンバァがシンバに昆虫を食べさせる場面を連想させます。キャステル | CASTEL テーマパーク情報
『ライオン・キング』のシンバは新しい食文化を受け入れますが、ジュディたちの反応は少し違います。
同じような状況を置きながら、登場人物の性格に合わせて反応を変える。引用でありながら、『ズートピア2』独自の笑いへ着地させています。
『ミラベルと魔法だらけの家』|ダ・スネーク家の家系図
終盤、ゲイリーは祖先が暮らしていた場所へたどり着き、ダ・スネーク家の家系図を発見します。
その家系図のデザインは、『ミラベルと魔法だらけの家』に登場するマドリガル家の家系図を思わせる構成です。キャステル | CASTEL テーマパーク情報
どちらの作品も、家族の歴史が現在の登場人物へ大きな影響を与えています。
『ミラベルと魔法だらけの家』では、受け継がれた奇跡と期待が家族を縛りました。『ズートピア2』では、隠された都市の歴史によって、爬虫類たちの居場所が奪われています。
見た目の似た家系図を置くことで、これは一人だけの問題ではなく、世代を超えて残された問題なのだと伝えているように感じられます。
新キャラ・新エリアがオマージュを増やした理由
『ズートピア2』でオマージュの幅が広がった背景には、ヘビのゲイリーをはじめとする爬虫類キャラクターと、マーシュ・マーケットなどの新エリアがあります。
前作は主に哺乳類の捕食者と被捕食者の関係を描きました。
続編では、これまで街の表舞台にほとんど登場しなかった爬虫類の歴史を扱うことで、映像の質感や参照できる映画ジャンルが増えています。
爬虫類キャラクターでサスペンス表現が広がった
ゲイリーはヘビであるため、周囲から危険な存在だと警戒されます。
体をくねらせる移動、音を立てずに現れる動き、狭い場所へ入り込める性質は、哺乳類のキャラクターとは異なる画面づくりを可能にしました。
しかし、物語が進むと、危険に見えたゲイリー自身が都市の歴史によって傷つけられた側であることが分かります。
サスペンス映画のような見せ方で観客の警戒心を刺激し、その警戒心こそが先入観だったと気づかせる。ここには、前作から続く『ズートピア』の仕掛けがあります。
観客もジュディたちと一緒にゲイリーを疑ってしまうため、真相を知ったとき、自分が何を根拠に相手を怖がったのかを振り返ることになるのです。
マーシュ・マーケットは小ネタを置きやすい新舞台
水路、船、湿地、地下の集会場所などがあるマーシュ・マーケットは、前作の都市部とは異なる文化を持っています。
建物、食べ物、移動方法、音楽が変われば、看板や道具も一から設計できます。制作側にとって、新エリアはオマージュを仕込める巨大な余白です。
『わんわん物語』の音楽が流れる舟の場面や、『アナと雪の女王』を思わせるノック音も、新しい土地の構造があるから自然に成立しました。
オマージュは作品の外から借りたものですが、ズートピアの文化へ置き換えられているため、世界観から浮いて見えません。
新しい場所は「誰が街から消されたのか」を映す
私が新エリアで特に重要だと感じたのは、美しい景観そのものではなく、そこが爬虫類たちの隠れた生活圏になっていることです。
マーシュ・マーケットに小ネタが多いのは、単に賑やかな場所だからではないでしょう。
公式の都市史には残されなかった住民にも、食文化、音楽、合図、家族の記録がある。その膨大な生活情報を、背景の一つひとつが語っています。
つまり、本作のイースターエッグ探しは、制作陣の遊びを見つけるだけではありません。
画面の中心から外れた場所を見ることは、物語の中で社会の中心から外された者を見る行為とも重なっています。
「中央より背景を見る」という鑑賞方法そのものが、本作のテーマと不思議に結びついているのです。
ズートピア2のオマージュから読み解く人物の感情
オマージュは元ネタ当てのクイズではなく、登場人物が言葉にできない感情を補う演出でもあります。
特にジュディ、ニック、ゲイリー、パウバートの関係を見ると、引用された作品の内容が人物心理と重なっていることが分かります。
ニックのフライパンに表れた恐れ
ニックがゲイリーをフライパンで殴る場面は、表面上はコミカルです。
しかし、ニックの行動には、ジュディを危険から守りたいという切迫した気持ちがあります。
『塔の上のラプンツェル』の場面も、知らない侵入者への恐怖から始まりました。相手を理解する前に攻撃してしまい、その後に関係が変わっていきます。
ニックは普段、冗談や皮肉で感情を隠す人物です。
そんな彼が考えるより先に手を出す場面だからこそ、ジュディを失うことへの恐れが見えます。フライパンの音は軽快なのに、その奥にある感情は意外と重いのです。
「ベラ・ノッテ」が映すジュディとニックの距離
マーシュ・マーケットで流れる「ベラ・ノッテ」は、恋愛関係を断定する演出ではありません。
むしろ、二人が自分たちの関係をうまく説明できていない時期に流れるからこそ意味があります。
ジュディは理想へ向かって走り続け、ニックは置いていかれないよう隣に立とうとします。
一緒にいることは自然なのに、相手が何を抱えているのかは完全には分からない。そんな二人へ、過去のディズニー映画から恋とパートナーシップの曲が流れ込んできます。
本人たちより先に音楽が関係を語ってしまう。
落ち着いて分析しているつもりですが、しずくの心はこの場面でかなり騒がしくなりました。
『シャイニング』の迷路が示すパウバートの孤独
パウバートは単純な悪役というより、リンクスリー家の中で認められることを求め続けた人物として描かれます。
雪の迷路で彼が一人になっていく姿は、『シャイニング』の恐怖を借りながら、家族の期待に閉じ込められた孤独も映しているように見えます。
迷路には、出口が見えません。
パウバート自身も、家族に従う以外の生き方を見つけられず、間違った方向へ進み続けます。
ここからは私の考察ですが、彼が迷路で追う側になるのは、自由に動いているようでいて、実際には家族が作った道の中から出られていないことを示しているのかもしれません。
元ネタを知ると恐怖が増します。
人物の背景を考えると、その恐怖の中へ少しだけ哀しさも入り込んできます。
ズートピア2のオマージュは伏線なのか?今後への考察
オマージュの多くは、物語の結末を直接予告する伏線ではありません。
ただし、選ばれた作品のテーマや登場人物の関係が、『ズートピア2』の展開を先回りして示している例はあります。
元ネタの物語が展開を暗示する場合がある
『塔の上のラプンツェル』のフライパンは、敵だと思った相手が後に信頼できる存在になる流れと重なります。
『わんわん物語』の楽曲は、異なる環境で生きてきた二人の距離を映します。
『シャイニング』の迷路は、追う者が孤立し、自ら出口を失う結末を連想させます。
これらは、次に何が起きるかを暗号のように示す伏線ではありません。
しかし、元作品の記憶を持つ観客には、場面の先にある感情を予感させます。オマージュが物語の道標として働いているのです。
爬虫類の次に描かれる存在はいるのか
『ズートピア2』では、前作の都市から除外されていた爬虫類の歴史が描かれました。
この流れを踏まえると、今後のシリーズでも、都市の表側から見えなかった地域や動物が焦点になる可能性があります。
ただし、続編の内容や新たな主人公について、現時点で未発表の情報を断定することはできません。
それでも本作が示したのは、ズートピアが完成された理想都市ではなく、語られていない歴史を抱えた場所だということです。
前作で解決したはずの偏見も、形を変えて残っていました。
一つの事件を解決すれば社会全体がきれいになるわけではない。この少し苦い現実感があるからこそ、『ズートピア』は子どもだけでなく大人の胸にも残るのでしょう。
オマージュが多いことは作品の弱点にもなり得る
個人的には、小ネタの豊富さは『ズートピア2』の大きな魅力だと感じます。
ただし、元ネタ探しに意識が向きすぎると、ジュディとニックの関係やゲイリーの家族史が薄く見えてしまう危険もあります。
制作陣が約800個もの候補を削ったのは、そのバランスを理解していたからでしょう。Good Housekeeping
オマージュは、分からなければ楽しめない仕組みではありません。
知らなくても物語が成立し、知っていれば別の感情が重なる。その距離が保たれているから、作品への入口を狭めずに済んでいます。
全部見つけようとしなくても大丈夫です。
初見はジュディたちと事件を追い、二度目は背景を見て、三度目は音を聞く。そうして鑑賞するたび、同じ街に別の入口が現れます。
本記事のまとめ|ズートピア2のオマージュを知ると何が変わる?
『ズートピア2』には、ディズニーとピクサーの過去作だけでなく、ホラー、サスペンス、ファミリー映画など、多彩なオマージュが仕込まれています。
特に注目したいポイントは次のとおりです。
- 雪の迷路とパウバートの追跡は『シャイニング』
- ベルウェザーの独房は『羊たちの沈黙』
- ライオンのシェフを操るネズミは『レミーのおいしいレストラン』
- アライグマの料理人は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』にもつながる
- ニックが使うフライパンは『塔の上のラプンツェル』と同じ効果音
- セイウチの舟で流れる曲は『わんわん物語』の「ベラ・ノッテ」
- ネズミに驚くゾウは『ダンボ』を思わせる
- 配信サービス「Huluzoo」には映画や番組の動物版タイトルが並ぶ
- 看板、ポスター、UI、小物、BGM、効果音に注目すると見つけやすい
- オマージュは笑いだけでなく、人物の心理や場面の緊張感を補っている
『ズートピア2』のイースターエッグは、すべて発見しなければならない宿題ではありません。
ジュディの耳の動きに気を取られ、ニックの表情を追い、ゲイリーの言葉を聞いていたら、看板を見逃す。それでいいのです。
後からもう一度同じ場面へ戻ったとき、前には見えなかったものが画面の隅で待っています。
ズートピアという街は、一度通っただけでは覚えきれません。だからこそ、また歩きたくなるのでしょう。
よくある質問
ズートピア2で一番分かりやすいオマージュは何ですか?
ライオンのシェフの帽子からネズミが現れる、『レミーのおいしいレストラン』のオマージュが特に分かりやすいでしょう。
映像だけでなく、同作を思わせる音楽、アコーディオン演奏、アニメーターの参加まで重なった丁寧な引用です。
ベルウェザーの独房の元ネタは何ですか?
映画『羊たちの沈黙』に登場するハンニバル・レクター博士の独房です。
警備員の案内やジュディたちが独房へ向かう流れも、クラリスがレクター博士と初めて対面する場面を踏まえています。
ズートピア2のイースターエッグはどこを見れば見つかりますか?
街の看板、広告、ポスター、配信サービス「Huluzoo」の画面、机の小物、BGM、効果音に注目してください。
画面中央よりも、キャラクターの背後や端にある文字を見ると見つけやすくなります。



コメント